線維筋痛症候群

アメリカリウマチ学会(ACR)の線維筋痛症のサイト

を参考に意訳し書いていきます。(2019.1.14)

https://www.rheumatology.org/I-Am-A/Patient-Caregiver/Diseases-Conditions/Fibromyalgia

確かなこと

線維筋痛症は人口のうち2-4%に起こり、男性より女性に多い。
線維筋痛症は、自己免疫疾患でなく、病気による炎症でもない。
神経系の関与が研究から推定されている。

線維筋痛症は患者の症状に基づき診断されるのであって、圧痛点の数だけでされるのではない。

治らないにしても、薬によって症状を減らすことはできる。
また、患者自身の努力、すなわち体操や十分な睡眠をとることで、よくなるかもしれません。

線維筋痛症は、よくある神経に関する健康問題で、広範囲の痛みと圧痛、つまり押して痛い状態(触ることに敏感)をひき起こします。

痛みと圧痛は、波があり、移動します。

この状態が長期に続き慢性化すると、多くの場合、強い疲労と睡眠障害を起こしてきます。

線維筋痛症は女性に多いのですが、男性にも起こります。中年にもっとも発症しますが、若年者や老齢でも起こります。

関節症、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、強直性脊椎炎などの骨関節疾患の方は、線維筋痛症のリスクが高くなります。

線維筋痛症とは何か

線維筋痛症は、神経の慢性疾患で、全身の痛みと次の症状を起こします。
筋、関節、皮膚を触ったり押したりした時の圧痛
強い疲労
睡眠障害(疲れが取れない)
記憶や明瞭な思考ができなくなる

さらに
うつや不安
過敏性腸症候群 逆流性食道炎
過敏性または過活動膀胱
骨盤痛
顎関節症
を起こす人もいます。

線維筋痛症の原因

はっきりしていない。
神経系の関与:脳と脊髄。
自己免疫疾患、炎症、関節や筋疾患でない。
家族性はありそう。
線維筋痛症になりやすい遺伝子はありそうだが、遺伝子だけで発症しない。

線維筋痛症の誘因

脊椎疾患、関節炎、外傷、その他の身体的ストレス。
感情的ストレス。
その結果、身体と脳脊髄との関係に変化が起こる。
脳内の化学物質、タンパク量の変化が起こる。
中枢の痛みが増幅されている、つまり脳内の痛み感覚が非常に高い状態。

線維筋痛症は生活の質に影響するが、医学的には良性。
心臓発作、脳卒中、がん、身体の変形は起こさないし、致死的でない。

線維筋痛症の診断

まず、症状から線維筋痛症を疑います。
圧痛点の数を調べるかもしれないが、それらは診断に必要ない。

広範な身体痛が線維筋痛症の主な特徴なので、痛みについて詳しく聞きます。

甲状腺機能低下症、リウマチ性多発筋痛は線維筋痛症と似ていますが、これらは血液検査で診断できます。

関節リウマチ、全身性エリテマトーデスは線維筋痛症と区別がつきにくいのですが、症状、所見、血液検査で診断できます。

これらの疾患は、線維筋痛症と異なり、関節や組織に炎症を起こします。

アメリカリウマチ学会 2010 診断基準

1. 痛みの部位 7以上 症状重症度5以上または、部位3-6かつ症状重症度9以上
2. 症状は同じ強さで少なくとも3ヶ月持続
3. 症状を説明できる他の疾患がない。

痛みの19部位
左右の
肩、上腕、前腕、股(殿部、大転子)、大腿、下腿、顎:7×2=14

胸部 腹部 上背部 下背部(腰) 頸部: 5

症状重症度は0~12

疲労、睡眠障害、認知障害、それぞれが
0=問題なし 1=軽度か、間欠的 2= 中等度 3=重症 広く持続的で生活支障あり

身体症状
0=なし 1=ほとんどなし 2=中等度 3=多くあり

身体症状:筋痛、過敏性腸症候群、疲労、思考または記憶問題、筋力低下、頭痛、腹痛または胃痙攣、しびれ、めまい、不眠、うつ、便秘、上腹部痛、悪心、心配、胸痛、目のかすみ、熱、下痢、口内乾燥、かゆみ・チクチク・ヒリヒリ、いびき、レイノー、蕁麻疹、耳鳴り、嘔吐、胸焼け、口内炎、味覚障害、けいれん、ドライアイ、息切れ、食欲低下、紅斑、日光過敏、聴力障害、皮下出血しやすい、脱毛、頻尿、排尿時痛、膀胱痙攣

線維筋痛症の治療

線維筋痛症は治らないが、症状は治療できる。他種類の治療で最高の効果が期待できる。

非薬物療法

身体運動:規則的有酸素運動。太極拳、ヨガ。痛みがあっても、低い負担の運動は有害でない。

認知行動療法。マインドフルネスによるストレス低下。

統合療法:鍼灸、カイロプラクティク、マッサージ。これらは十分試験されていない。

線維筋痛症の危険因子や誘因である
睡眠障害、ストレス、不安、パニック障害、うつなど、他の専門家の関与が必要かも。

薬物療法

FDAが認可。デュロキセチン、ミルナシプラン、アミトリプチリン、シクロベンザプリン。

プレガバリン、ガバペンチン。

オピオイド麻薬は避ける。

トラマドールは短期使用可。

アセトアミノフェン、NSAIDは効果がない。ただし、誘引となる関節症には効果的。

睡眠障害には、シクロベンザプリン、アミトリプチリン、ガバペンチン、プレガバリン。
ゾルピデムやベンゾジアゼピンは勧められない。

以上

日本

線維筋痛症ガイドライン2013
日本線維筋痛症学会
http://minds4.jcqhc.or.jp/minds/FMS/CPGs2013_FM.pdf
では、ACR2010年基準では、特異度が低下するので、ACR1990年基準での確認を勧めている。

アメリカリウマチ学会(ACR)の線維筋痛症分類(診断)基準(1990)

の定義 では、疼痛は以下のすべてが存在するときに「広範囲の疼痛」とされる。身体左側の疼痛、身体右側の疼痛、腰から上の疼痛、腰から下の疼痛、さらに体幹中心部(頸椎、前胸部、胸椎、腰椎のいずれかの痛み)が存在する。

決まった点18カ所のうち11カ所以上を押さえて痛いことと,
広範囲に痛みが3ヵ月以上続けば「線維筋痛症候群」という診断になります。

#18ヵ所の圧痛部位(11以上=6カ所以上で本疾患と診断 American College of Rheumatology guidelines 1990 )
圧痛は4kg,爪が白くなる程度

1. 後頭部:両側後頭下筋の腱付着部
2. 下部頚椎5-7の前方
3. 僧帽筋 上縁中央
4. 棘上筋:内縁付近の肩甲骨棘の上
5. 第2肋骨 肋軟骨形都合部の外側
6.上腕骨外上顆から7cm 遠位3cm内側
7. 殿部:1/4 上外側部
8.大転子突起の後部
9.膝内側やや近位

それぞれ右と左側で9×2=18ヵ所になります。

私のコメント:線維筋痛症候群かどうか、という診断より、慢性広汎性疼痛であるかどうかの判断、痛覚過敏や感覚過敏の有無の判断が重要だと考えます。

圧痛点の選択にも疑問を感じます。

痛覚過敏の存在の確認には便利ですが、18ヵ所と異なる部位が痛い場合もあります。

私の印象:線維筋痛症候群と診断される痛覚過敏の方には、疼痛の対称性、つまり、左右の痛みの差が少ないという特徴があるように思います。

全年令で発症するが, 中高年女性に多い。
全身的疼痛,左右半身,上下半身,体軸の全てに疼痛。
びまんせいのこわばり
朝に悪化 運動, 睡眠不足、悪天候で悪化

過敏性大腸症候群, 緊張性頭痛,上肢感覚異常, 手の自覚的関節腫張, 睡眠障害による疲労 不安 鬱(ない場合もある)を伴うことがある。

精神障害でない。
症状はまれなものでない。
変形性でも致命的でもない。

若く軽症ほど予後はよい。
大部分は慢性化する。

鑑別
他のリウマチ性疾患否定
純粋な「うつ」では圧痛点はない
局所の筋病理正常,
リウマチ性多発筋痛, 多発筋炎,強直性脊椎炎:仙腸関節炎+多発性付着部炎seronegative(RF) spondyloarthritis と鑑別

#重症度分類

ステージ1:圧痛点11/18以上、日常生活には問題なし。

ステージ2:指など末端に痛み,不眠,不安,抑うつ、目常生活困難
ステージ3:激しい痛み持続。軽い刺激で痛みが全身へ。 自力生活困難。
ステージ4:痛みで身体が動かせない。
ステージ5:痛みと意識もうろう.膀胱直腸障害, 口の渇き、目の乾燥など全身症状。

私のコメント:ステージ1に留め、悪化させないこと、ステージ2以上からステージ1へ改善することが治療目標となります。

50%は3年で改善、対応を誤るとQOL低下,失職もありうる。
遺伝的要因, 心理社会的ストレス,精神症状,疼痛異常の悪循環。
脳で機能異常 :
通常の刺激は視床から脳へ刺激、
慢性痛では前頭葉が興奮、前頭葉は不安, ストレ スが働く所、痛みの感情がコントロールできない状態、痛みの記憶があり,わずかな刺激でも増幅 され,長く強く続く。

失業、家族の死、離婚、悲観的思考、心的外傷など、痛み、不快、不安や恐怖が脳の異常を起こす

私の結論:

生まれつきの痛覚過敏体質に加え、中高年の骨関節起因の痛みが増幅、過敏化、慢性化し、その結果、自律神経異常や睡眠障害という脳の機能異常を起こしている状態。脳や心の治療と、身体の治療の両者が必要です。

私の慢性広汎性疼痛への現在の治療

症状に応じた漢方の使用
ノイロトロピン
睡眠障害にトリプタノールまたはランドセン
運動の勧め
痛みを生まない身体の使い方を指導
認知行動療法(考え方、過ごし方など) 痛み日記
リハビリテーション 温熱 電気刺激 遠絡療法(経絡、鍼灸)の応用
局所的な痛みにはエコーガイド下ファシアリリース

上記で対応がほとんどつくため、リリカ、サインバルタ、トラマールは使用していません。特に漢方は非常に有用だと感じています。

線維筋痛症候群の方にメッセージ

当院を受診された線維筋痛症候群の方は、残念ながら、ほとんどが初診以後の受診をされません。

問診、診察には満足、感動される方が多いようです。

線維筋痛症関連で受診される方向けの特別な問診体制をとっています。

初回の情報提供、治療方針はきちんとお話しています。

それなのになぜ、おつきあいいただけないのか??

私としては、少なくとも3ヶ月ぐらいは時間をいただきたいと思っています。

過去には、数年の経過でしたが、痛みがなくなって、卒業された方もいます。

しかし、痛みをとることではなく、自分を変えることが、治療の目標となります。

この受入が必要です。

どうも、1回の治療で、痛みがなくなる、ことを安易に期待しすぎだと感じています。

よくしたければ、自分の気付き、努力が必要です。

不思議なことに、痛みがあるのに、身体の使い方にズサンな方がほとんどです。

私自身、アレクサンダー・テクニークを研究、実践を始めて、身体を壊さなくなるのに、10年程度かかっています。

生活動作の分析にも時間がかかります。

そこでいろいろエクササイズや、助言ができます。

薬剤選択にも時間がかかります。

必要なら、注射もします。

通院間隔は遠方のかたなら月1で治療をしていきます。

多面的な治療が必要なので、腰を落ち着けて、時間をかけて通院される覚悟で、当院を受診してください。

よろしくお願いします。

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